未来世療法 ブライアン・Ｌ・ワイス著 PHP研究所
ワイス博士は退行催眠による過去生療法で有名ですが、今回は催眠により未来を体験することで現在の状況を改善し、更にそのことで肯定的な方向へと未来を変えてゆけることを示唆してくださった本です。
多くの医師や心理学者等による退行催眠や臨死体験の研究により、人間は輪廻転生する存在であることがすでに明らかになっています。
この本でも、過去生や魂の存在を示す証拠の一つとして、今生では一度も聞いたことも習ったこともない外国語をしゃべることができる患者がいること（20p）や盲目の女性が手術中の様子を描写したこと（22p）
すでに亡くなって霊的存在である祖母が孫に話した母親の子ども時代の秘密が後で事実だと確認できた話（128p）などが紹介されています。
私たちの本質は魂（一つのエネルギー）であり、さまざまなことを学ぶために人生を何回も繰り返し輪廻転生すること（１回の人生では学びきれないため、また、いろいろな境遇に身をおき、さまざまな体験をすることによって人に共感できるようになる）、自分のした行いはすべて自分に返ってくること（仏教的に言えば因果応報）もっと深いところではすべての存在がつながっていること（深いところでのつながりが理解できれば、そこに思いやりが生まれる）など、これまで宗教で“信じられていた”事柄が本当のことであったとやっと確かめられる時代になってきました。
自分で実際に退行催眠や未来世療法を体験しなくとも、多くの状況証拠がある現在、輪廻転生が信じられるだけでも余分な不安や恐怖がかなり薄められると思います。
ワイス博士は次のように言われます。
私たちは安全あるいは、保障という言葉を毎日、どこかで耳にします。財政的安全、社会保障、国家の安全など、どれも大切なものです。しかし、ここではもっと深い意味の安全、自己の安心感について考えてみます。感情や感覚の安全など、私たちが家族や恋人や友人、または社会や文明と十分に交流できるようにしてくれる安全、安心感のことです。
こうした安全は、自分を愛すること、魂として自分を理解すること、そして自分は過去世に、そして未来世にあらゆる時を超えて存在することを知るところから生まれます。真の安全と安心は、人は死なない、永遠の存在であり、傷つけられることはない、と知ることからやって来るのです。
物質的快楽は一生保障されているにもかかわらず、安全な感覚をまったく持っていない惨めな大金持ちを、私は何人も治療してきました。安全は物質の所有から得られるものではありません。私たちはお金や物を次の人生に持ってゆくことはできません。しかし、自分の行ない、行動、成長など、つまり、霊的な人間としてあなたが学んだことや成長の仕方は、持ってゆくことができます。自分の才能も持ってゆけます。（218p）
現代は環境や犯罪の悪化等で不安や恐怖はますます大きくなっています。
安心して生活できる世の中に少しでも近づけるために、この世の物質次元でもできうる限りの努力をすることは大切なことだと思います。
しかし“死”とは何かについての本質的な理解がなければ、根本的に不安や恐怖が払拭されることはないと思います。
死は誰にも平等におとづれますが、愛する人との別れ、やり残した仕事等への無念、築いてきた財産の喪失、物質次元からの視点だけしかなければ、すべてが無に帰してしまうというその焦燥感は何をもっても埋め合わせることができないと思います。
また逆に生きることへの苦しさから死んでしまえばすべてが無に帰し、現実から逃れ楽になるという、勘違いもおきてしまいかねません。
愛する人との別れは永遠ではなく、また霊界でももちろん会えますが、次の転生でも一緒にいることが多いことを知っていたら、どれだけ癒されるでしょうか。
自分の行いを転生で持って行けるとしたら「やり残してしまった…」と悔いることも少なくなるのではないでしょうか。
また大いに癒されると同時に、責任感を感じて行動することもできるのではないでしょうか。
いいことでも悪いことでも自分のした行いが自分に返ってくるとしたら、あまりにも理不尽なことはやりにくいのではないでしょうか。
精神世界では“この世に偶然はない”とよく言われます。
また次の人生で学ぶことは生まれる前に自分自身や、高次の霊的存在からの示唆で決められるそうです。
ですから人生の節目節目で起こる重大なできごとは、すでにあらかじめ決められているといわれています。
運命などといいますが、では未来はもうすでに決められて変えることができない仕組みになっているのでしょうか。
ワイス博士は多くの方に行った未来世療法によって、一つの見方を示してくださいました。
ワイス博士は本書で次のように言われています。
未来は変えられるということ、そして、私たちはより良い未来を生きられるのだ、ということを、私は本書で伝えたいと思います。（11p）
「未来は変えられる」ことについて具体的な例があげられていますので、ご紹介いたします。（76p〜79pを要約しました）
現在ユダヤ人である女性はアラブ人をののしっています。９．１１の自爆テロから症状が悪化しました。
過去生にもどると、ある時はナチの士官としてユダヤ人を虫けらのように殺していました。
現在のユダヤ人擁護の態度は前世からきていますが、差別や偏見をなくすという学びがなかったために相手は変わっても誰かを憎しみ続け、自分も苦しんでいます。
ここでワイス博士はここままの状態で転生したらどうなるか催眠によって未来を体験させました。
来世ではイスラム教の少女となり、ユダヤ人をののしっています。
そしてまた次の生では東アフリカに住むキリスト教徒の男性でヒンズー教徒がまわりに増えていくことに怒っていました。
彼女はそれらの来世を見た時に、自分はいつも誰かを憎んでいることに気がつきました。そして暴力は苦しみを増すだけで、怒りは思いやりと愛によってとけてゆくことを実感しました。
彼女は他の人々や文化に対する自分の思いこみを変えなければならないこと、憎しみを理解に変える必要があることを実感をもって学びました。
次にワイス博士は偏見や差別を手放した時の未来を催眠で体験してもらいました。
未来世ではハワイのホテルの支配人をして多くの人たちが元気になるのを手伝っていました。
未来世は過去世のようにそれが事実かどうか確認することはできません。
それについてワイス博士は
未来について説明する時に、一つ注意しなければならないことは、未来のシナリオを作る時に潜在意識にある自分の望みを投影する可能性があることです。心理分析者にとって、こうしたシナリオは非常に大切です。どんなものであれ、深層心理が作り出したものは治療のために役立ち、その当人にとって意味があるからです。この意味では未来の記憶は夢のようなものです。しばしばそこにはシンボルや暗喩、心の奥にある希望や欲望、実際の記憶や予知的体験などの混合物が含まれています。違う言葉で言えば、患者が未来を見たからといって、必ずしもそれが「本当の」未来であるとは言えません。それにもかかわらず、記憶の持つ力強さと即時性は、すぐに患者の現在と未来の人生を変えます。（改善します）。セラピストにとって、こうした変化は、彼らが見たものが真実かどうか検証することよりも、ずっと大切なことなのです。
それでも、近い将来に関する多くのビジョンは、真実であることが証明されています。（336p）
と言われています。
来世を確認することはできないとしても、この例でご紹介した女性は催眠により未来を実感することによって今の状況を変えることができました。
ワイス先生は未来は固定的なものではなく、自分の自由意志による選択によって無限の可能性があることを未来世療法によって示されました。
因果応報という大前提があるのですから、現在の状況が改善されることにより来世が肯定的に変わっていくということだけは変えようのない事実だと思います。
これまで膨大な過去世、未来世療法をおこなったワイス博士は時間について次のように感じられました。
私たちが未来を見ることができるのは、過去も現在も未来も一つであり、今、ここに、同時に起こっていて、年、月、日、時間、分という地球時間を計る時間軸とはまったく違うという事実に、私たちのどこかが反応しているからだと思います。（337p）
「過去も現在も未来も一つであり、今、ここに、同時に起こっている…」地球の時間軸とは違うものが存在していると言われても普通は感じることができないのでまったくピンとこないと思います。
実際に体験したことがなければなかなか理解することができないでしょうね。
しかしこれと同じことは私の属している曹洞宗の開祖、道元禅師が『 正法眼蔵（しょうぼうげんぞう） 』という著書の中で時間について論じている『 有時（うじ）の巻 』で次のように言われています。
時は飛去（ひこ）するとのみ解会（げえ）すべからず、飛去は時の能とのみは学すべからず。時もし飛去に一任せば、間隙（けんぎゃく）ありぬべし。有時の道（どう）を経聞（きょうもん）せざるは、すぎぬるとのみ学するによりてなり。要をとりていはく、尽界にあらゆる尽有は、つらなりながら時時なり。有時なるによりて吾有時なり。
【訳】
時が飛び去るものとばかり考えてはならない。飛び去ることだけが時の働きであると学んではならない。時が飛び去るだけであるならば、時と我の間に隙ができるに違いない。今までに有時の道理を明らかにしたものがいないのは、みな、時が去るものとばかり考えているからである。
この問題について要点をいうならば、一切世界のあらゆる事物は、連っている時である。それは有時であるから我の有時である。（全訳 正法眼蔵 巻一 中村宗一 誠信書房 388pより引用）
すべての存在は深いところでつながっている、とこれまで何回もご紹介しましたが、道元禅師はそのすべての存在の中には“時”も含まれていると言われます。
すべての存在は過去、現在、未来をも含み皆つながっている…。あまりにスケールが大きく、次元の違う話なので頭で理解することはできないのですが、真理の目から観ればやはりこのような表現になるのだと思います。
すべての存在はつながっている。だから互いの違いを理解し調和を求めることが大切です。
ワイス博士は次のように言われています。
私にとって、霊的であるとは、思いやりが深く、愛情深く、親切であるということです。これは、何も見返りを期待せずに、愛に満ちた心で人々に手を差しのべることを意味しています。また、自分よりも偉大なる何か、私たちが努力して発見しなければならない未知の次元に存在する力を認める、ということでもあります。そして、学ばなければならない高次のレッスンが存在し、それを学んだあとにはさらに高次のレッスンがあることを、理解することでもあります。
私は宗教的な人々が暴力的な行為を行ない、戦争行為へと他の人々をけしかけるのを見てきました。「殺せ」と彼らは言います。「お前たちが攻撃するものたちは、我々とは信条を共有しないから敵なのだ」この人々は、存在するものはすべて一つの宇宙、一つの魂だけであるというレッスンを、まだ学んでいないのです。私には、彼らの態度はどの宗教を信奉していようと、非霊的です。実は、これこそ、宗教と霊性の違いを画しているのです。霊的であるためには、宗教は必要ありません。（285p）
つい先日（2005年７月７日）もロンドンで地下鉄・バスを標的とした同時爆破テロ事件が起きました。
現在（７月10日）確認されているだけでも約50人の死者がでていると報道されています。
あまりの惨劇にやるせない気持ちでいっぱいです。
このような事件が起きてしまう理由は、この世的にみれば、いろいろあるのでしょう。しかし根本的にはワイス博士が言われるように「この人々は、存在するものはすべて一つの宇宙、一つの魂だけであるというレッスンを、まだ学んでいない」ということになるのだと思います。
イスラム原理主義の国際テロ組織が犯行声明を出しているようです。
宗教とはいったい何だろう、とこのような事件を見聞きするたびに思ってしまいます。
誰しもが平和な暮らしを願っていると思います。
生活の規範となり、教え導いて行くのが宗教の役割です。
みなそれぞれ真理を目指しているはずなのに、表面的な違いにばかり目を向け、そして排他的になっていることが多いですね。
どんな宗教でもいったん組織ができてしまうと、ある意味物質的な性質を持ち、物としてその形体を維持するためにどうしても自己保存や自己主張に傾きがちです。
これまで何回もお伝えしていることですが、早くワイス先生の言われるような宇宙の真理がこの世のごく普通の常識になって欲しいと強烈に思います。
その時、もはや宗教はその役目を終えてなくなるでしょう。きっと今よりももっと住みやすい世の中になっているのではないでしょうか。
一般的にはまだ自分の未来を知ることはできないため、将来の私はどうなってしまうのだろう？と不安に思っている方も多いと思います。
そして今の荒廃した世の中の状況を目にして、人類は…、地球は…どうなってしまうんだろうと漠然とした不安をお持ちの方も多いと思います。
私も人の心や環境の荒廃を見聞きするにつれ不安に思ってしまうことも多いです。
ワイス博士は治療として患者さん個人を未来へ導くだけではなく、セミナーを開き、参加者を百年先や千年先に導いているそうです。
未来は変更のきく目的地のようです。広大な統計的範囲の中に、無限の可能性のある未来とあり得る未来が存在しています。私たちの個々のこの人生での近未来と近い未来世は、かなりの程度、私たちの現在の選択と行動にかかっています。ずっと先の未来、つまり私たちの遠い先の未来、この惑星の未来（地球は永久に存在するかもしれないし、私たちが破壊してしまうかもしれません。でも地球を破壊しても、私たちは唯一なるものへの歩みを止めることはないでしょう）は、すべての人々の決断の総和にかかっているのです。
この決断が何かは、今から千年先の未来のビジョンの中に、見ることができます。特定の未来に近づけば近づくほど、より正確に私たちは予見できるようになります。
千年以上も先を見ることが大切なのは、今日の地球が危険になりつつあるからです。そして、そこで見たことから、もっと私たちの決断に知恵を働かせれば、私たちは今から始まる未来の方向を、変えることができるかもしれないからです。
私のセミナーでは、私は参加者のグループを、百年後、五百年後、千年後、それ以上というように、いくつもの遠い未来へと導いています。参加者のビジョンに共通点があるかどうか、見たいからです。もし、共通点があれば、世界が彼らが予見したように見えたり、感じられる可能性が高くなるからです。私の実験はまだ始まったばかりですが、九〇パーセントのビジョンに驚くべき類似性を見出しています。そして、今からずっと先の世代には、すばらしい世界が私たちを待っている可能性がきわめて高いことを、ますます強く信じるようになりました。（338p）
この本ではセミナーに参加した二〇〇〇名を超える人々のみたビジョンの共通性から百年後、五百年後、もっと先の未来についてのシナリオの概要が報告されています。
これらについては是非本書をお読みになってお確かめください。
ここで私が以前ご紹介した小説家の佐藤愛子さんの『 私の遺言 』の中の佐藤さんと亡くなられて魂の存在である遠藤周作さんとの会話が思い出されます。
別の時、私は江原さんからこの国の先行きについて遠藤さんに訊ねてもらった。すると遠藤さんの返事はこうだった。
「国のことよりも自分のことだ」
私ははっとした。急所をグサリと突かれた思いだった。そうだった、大切なことは人、一人一人が自分の波動を上げることだった。一人一人の波動が上れば社会の波動が上り、国の波動も上るのだ。それが今まで私が学んできたことだった。政治家を批判しても仕方がない。国民の波動が上れば波動の高い政治家が出てくる。一人一人の波動の高まりが優れた政治家を産み出すのだ。（私の遺言 佐藤愛子 新潮社 260p）
あいつが悪い！、こいつをどうにかしろ！と言ってもはじまりません。
物質次元での努力ももちろん大切ですが、それと同時に一人一人の波動を上げることが今まさに求められているのだと改めて感じました。
一人一人の波動が上がれば未来が明るい方向へと変わっていくのだと思います。
いろいろと参考になることが多いです。是非お読みになってみてください。
実行するのは難しいですが、私も少しでも自分の波動を上げられたらと思っています。
ここまでお読みになられたのも何かのご縁だと思います。
このような話にまったく関心のなかった方はこの機会に少し意識なさってみてください。
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最終更新日：2008年12月9日
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