廃　線

　テレビ朝日で毎週土曜日朝10時20分から『 五木寛之の百寺巡礼 』という番組を放送しています。
　２年間で百寺を巡る旅です。
　お寺の歴史的な背景や関わった僧侶たち、五木さんとそのお寺にまつわるエピソードなども紹介されています。
　五木さんのコメントが毎回心にひびき、また、映像の美しさにひきこまれます。
　仏教やお寺に関心のある方には是非おすすめです。

　今日は第十四番で永平寺でした。

　私は永平寺にお世話になったことがあるので、永平寺の紹介されている番組にはやはり興味があり、気がついたらいつも見るようにしています。

　五木さんは35年前にも永平寺を訪れたことがあるそうです。
　その時は京福電鉄の永平寺線に乗って行かれたそうです。

　私も永平寺に上山（じょうざん＝入門すること）するときに、福井駅から京福電鉄の永平寺線に乗って永平寺に向かいました。
　福井に着く前の電車が遅れて連絡が悪く、夕方の４時の門限に間に合うかどうか焦っていました。
　かなり待ってようやくのった永平寺線でしたが、途中の東古市という駅で止まってしまいました。
　何と東古市止まりの電車だったのです。
　ただでさえ、遅れそうなのにどうしようかと思いましたが、駅員さんに尋ねると永平寺までバスが出ているというのでそれに乗りました。
　それで何とか門限の15分前にやっと到着したのでした。

　門限には一応間に合ったのですが、「遅い！！みんな待っていたんだぞ！！」と怒られ、30分くらい入口の前に立たされました。
　さらに、バスは集合場所の地蔵院（永平寺の境内にある唯一の塔頭（たっちゅう＝大きなお寺に付属している小寺で、正門の脇にあります）のところでちょうど止まりましたが、「みんな駅から歩いてきたんだぞ！何だ！バスになんか乗って！」と怒られました。
　「電車がなくて、仕方なしにバスに乗ったんです…」と言いたいところですが、言い訳など一切できません。

　このように私にも京福電車には思い出がありました。

　今回も五木さんは京福電車に乗っていこうと思われたのですが、もう廃線になっていたのでした。
　五木さんは「バスに乗るのも悪くはないけれども、何か寂しいですね。」と言われていましたが、私も「ええっ！そうなんだ！」とこの時初めて永平寺線廃線のことを知りました。

　永平寺への参拝も自家用車や観光バスにとって替わられ乗客も少なくなっているところへ、２度も正面衝突の事故を起こし、２回目の事故があった2001年6月24日にそのまま廃線になったそうです。

　私も何かすごく寂しさを感じました。
　時代の移り変わりもあり仕方のないことですね。

　写真は1987年にバイクで永平寺にお参りにいった時に撮ったものです。左側に見えるのが永平寺線です。お寺を去ってから１年半後のことです。

　「遅れたらどうしよう！」と張り裂けそうな気持ちで通った同じ道をバイクで通ってみました。あの時の不安でいっぱいな自分と今の自由な自分を比較して、何とも言えない感慨にひたってバイクで走ったのでした。

　番組を見ているうちに、「今年の夏休みに永平寺に行っちゃおうかな」とチラと思ったりもしたのでした。

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