志し
野鳥の観察をはじめてもうすぐ２年になります。
はじめはすぐに飽きてしまうかも、とも思いましたが、興味はつきず、町中や多摩川でいろいろな野鳥を観察できるのが楽しみの一つになっています。
どの野鳥に会えてもうれしいのですが、特に好きなのがコゲラです。
コゲラは一番小さなキツツキですが、野鳥に興味がないころは“キツツキ”が自宅の近くにいる、なんて思いもしなかったので、初めて出会ったときの感動は忘れることができません。
８月２６日にＮＨＫで放送された『科学大好き土よう塾』という番組の中で「鳥はどうして鳴くの？」というコーナーがありました。
その中で「バードコール」という鳥の鳴き真似のできる笛が紹介されていました。
プロナチュラリストがバードコールを吹いてヤマガラの鳴き真似をしてみるとヤマガラがどこからかやってきて鳴き返しました。
そんなことができるなんて知らなかったのでびくりしましたが、その時に見たヤマガラの姿や鳴き声の美しさに魅せられてしまいました。
ヤマガラには２年観察していても一度も会ったことはなく「いつか会えたらなぁ」と思いましたが、きっともっと山の方に行かなければいない、と思っていました。
それが先月の下旬、朝出かけるとき家の近くで聞き慣れない野鳥の声を耳にしました。
「あれ？なんだろう」と声の方向を見てみると、これまた見たことのない野鳥です。
しかし薄暗いし、すばしっこい上に、私も急いでいたので何かはっきり特定できませんでした。
でも羽根の色、胸の色から「えっ、もしかしてヤマガラ！？」と半信半疑ながらも「そうかもしれない！」と思い、また見れたらいいのになぁ、と期待してしまいました。
それから数日後、同じ場所でやはり先日見た鳥に出会いました。
「今度はよく見るぞ！」と目をこらして追っかけるとやっぱりヤマガラでした。
「こんな場所でもヤマガラがいるんだ！！」と驚くとともに、うれしくなりました。
よく見るとヤマガラがちょこちょこ留まる木はヤマガラの大好きな実がなる「エゴノキ」でした。
それが何本かはえていたので、その実をつっついていたのでした。
 |
| やっと撮れたヤマガラ（10月7日撮影） |
ヤマガラとわかるとやはり写真が撮りたくなります。
翌日出会った場所に行ってみるとまたあらわれてくれました。
一生懸命シャッターを切りましたが、場所が薄暗いことと、動きが早いのでぼけたりぶれたりでまともな写真を撮ることができませんでした。
その時に撮ったのがこの写真です。↑
こんな写真でも私にとっては宝物です。
その後数日間、その場所で30分待ったり、１時間待ったりしましたが、出会うことはできませんでした。（興味のない方から見れば四十半ばのおじさんが小鳥に焦がれて突っ立っているなんてバカみたいに見えるだろうなぁ、いや実際鳥バカですが…）
エゴノキの実もなくなってしまったので、もう会えないなぁ、とあきらめて朝その場所へ行くこともやめました。
しばらくして実家から自宅へ戻る道すがら、鳥が道沿いの木に入っていくのが見えましたが、よく見るとヤマガラでした。
気がつかなかったのですが、ここにもエゴノキがあり、まだ実がたくさんついていたので盛んにつっついていました。
急いで家に帰りカメラを持ち出してまた写真を撮らせてもらうことができました。
道元禅師のお言葉に
先づ只欣求（ただごんぐ）の志しの切（せつ）なるべきなり。譬（たと）へば重き寶をぬすまんと思ひ、強き敵をうたんと思ひ、高き色にあはんと思ふ心あらん人は、行住座臥ことにふれ、おりに隨（したがっ）て、種種の事はかはり來るとも、其れに隨（したがい）て隙（すきま）を求め心に懸くるなり。この心あながちに切なるもの、とげずと云ふことなきなり。
（通釈）先ず仏道を欣び求める志が切でなくてはならないのである。たとえば重宝を盗もうと思ったり、強敵を討とうと思ったり、高い容色の人に会おうと思ったりしようと望む人は、行住座臥に事にふれ折りに随って、種々の事情が変ることがあっても、それに随って隙（すき）を求めて心にかけているものである。この心が強く切なるものは必ず目的を遂げないことはないのである。
（正法眼蔵随聞記 古田紹欽訳注 角川文庫 103pより引用）
道元禅師のお言葉のとおり、折りにふれヤマガラに会いたい！と心にかけていたからそれが実現したとも言えるかもしれませんね。
私の場合は真理を求める志しこそ常に心にかけていなければならないのですが…。
 |
| ヤマガラ（10月12日撮影） |
 |
| エゴノキの実を食べているヤマガラ（10月12日撮影） |
| 
